MAZIMANZI’s blog

剤の味は罪の味

シャドウバースの思い出

「このアプリを入れるものは一切の望みを捨てよ。」

 


こう言う名言を、かの文豪ダンテも残しているとかいないとか。

そんな曰く付きの恐ろしいゲーム、シャドウバースの連敗が、精神をいかに蝕んでしまうのか、オレは課題をやる時間を惜しんで残したこの手記で、皆さんに現実を伝えようと思う。

 


まぁ、オレが弱いだけだから、雑魚の遠吠えだと思って聞き流してほしいんだけどね。

 


ここんところシャドウバースを再開してしまって、確実に魔物に精神を乗っ取られかけているのを非常に感じている。オレがオレであるうちに力を振り絞ってこの記事を書いている。

 


最近、特に何が辛いって、いくら練習しようとしても結果が出ない。これが1番辛い。

 


tonamelというサイトでは基本毎日大会が開かれていて、優勝賞品であるプリペイドカードやzoneというエナジードリンク24本を目指して毎日毎日挑み続けるのだが、悲しいことに一向に勝てない。

 


いい時は3回戦くらいで負けて、半分くらいは1回戦目で負けてしまう。

 


実はオレはこのゲームをインストールするのは3回目で、実は3個目のアカウントである。

 


1回目も、2回目も、このままだとオレは理性を失い、狂戦士と化してしまう という確信に近い感情から、データ連携を切って完全にアンインストールしているのだ。

 


そして今は、1回目のあの時と同じようなシチュエーションになっている。

 


今日はその時の話をしようと思う。

 


あれはオレが高校生の時だった。

 


当時、グランドマスターという、マスターランクの上の称号が登場していて、シャドバにそこそこ自信のあったオレはもちろん目指すことにした。

 

おそらくカードパックはワンダーランドドリームズか星神の伝説どちらかだったと思う。(シャドバを知らない人に向けていうと、この当時は特にゲームバランスが悪いことで有名であり、その酷さは今とは比べものにならない。ちなみにシャドバの名誉のためにいうと、サイゲもバランス調整に尽力してくれており、今の環境はとてもバランスが良い)

 


これはオレの性格の悪いところだと重々承知しているのだが、グランドマスターになってないやつのデッキ構築の話なんか、誰も耳を傾けない という強迫観念に駆られてしまい、中途半端で引き下がることが出来ずにひたすら猿のようにランクマッチに潜り続けた。

 

下手にそこそこゲームがうまかっただけあって、自分のアイデンティティの一部をシャドバに賭けてしまっていたことも、グラマスを目指さざるを得ない強迫観念となって襲いかかった。


オレは環境トップのデッキを使うことを頑なに拒み、自分のお気に入りの、tier表に入ってすらいないデッキを使い続けていた。


もちろん、そのようなデッキを使っているので勝率が低いのは当たり前なのであるが、オレはそれから目を背け、下手なのはプレイングが悪いせいだ‼️ と喚き続け、またランクマッチという終わらない輪廻に身を投じ続けた。

 


脳内では、開明的なガリレオが、今はこのデッキが強いですよ。これが時代の流れです。 と訴えているのにも関わらず、過去に拘泥するこれまた脳内の異端審問官が、このような考えが頭をもたげるたびにシュバってきて、今すぐその説を撤回しろ‼️ソウルディーラー3積復讐ヴァンパイア(当時オレが使っていたデッキのこと)は強いと言え‼️さもなくば死刑にする‼️ と並々ならぬ圧をかけていたのだ。

 


そう、これこそが底無し沼の入り口、地獄の一丁目だったのである。

 


強いデッキでグランドマスターに到達したところで、どうせ環境に便乗しただけの雑魚が と思われるのが物凄く嫌でたまらなかった。

 


もちろん、そんなことを言う人はいないだろう。

 


他者は自分を写す鏡という言葉がある。

 


この言葉が表すように、

 


この

 


環境トップ使ってグラマス登っただけの雑魚がよ‼️そんなデッキを使えば誰でもグランドマスターになれる。そんなものでとったランクに意味はない。とオレに言って嘲笑してくる人は脳内の産物でしかなく、まさしくオレが環境トップのデッキを使っている人に対して抱いていた感情そのものだったのである。

 


しかし、冷静さを失ったオレはそれに気づくことが出来ず、ひたすらに時代の変化を拒み続けながら、放課後毎日ランクマッチをやっては、

 


「クソがよ‼️」 とか 「ぶち殺すぞクソボケ‼️」「ご都合主義の紙束が‼️」とか喚き倒すバケモノが誕生していた。

 


そしてオレには、もう一つこのチャレンジから引けない理由があった。

 


周りの友達にもフォロワーにもみんな、オレはこの復讐ヴァンパイアでグラマスに行くぜ‼️と喧伝

してしまっていたのだ。ここで、行けませんでした〜 と情けないことを言って、環境トップに鞍替えしたら、どれだけ情けないか‼️ このことが脅迫観念のさらなるトリガーとなった。

 


この時は連勝ボーナスも存在せず、1日500mpずつ盛っていき、20日で到達するという作戦を取っていた。

 


今でこそ3ヶ月間の猶予があるが、当時は1ヶ月でグランドマスターにならないとmpが0に引き戻されてしまっていた。

 

このゲームでは、マスターポイント、通称mpというポイントを1万貯めることで、グランドマスターという輝かしい緋色の称号を手に入れることができる。

 


つまり、どういうことか。こんなにも時間をかけてシャドウバースをやっていても、グランドマスターという結果を出さない限りただのオナニーと化すのである。

 


結果を出さないのは無意味だ。このような強迫観念すら追加され、頭では強迫観念三兄弟が毎日のようにオレに圧力をかけていて、もう限界であった。

 


特に、3連敗でもした時のことを想像してほしい。1日500というノルマを達成するには5回勝てばいいという単純な話ではない。5回分勝ち越さないといけないのである。

 


皆さんも、お金を稼ぐ時に、自分のためにする貯金と、借金返済のためにやる労働では意欲が全く違うだろう。

 


シャドウバースもそれなのだ。負けた分を取り返すための試合というのは本当に気が乗らない。

 


もしここで負けたらどうであろうか。返済はますます遠のく。

 


「このクソオモチャデッキがよぉぉぉぉ‼️」

 


この時、オレは人間を辞めてしまった。

 


そして、負けた時にはとりあえずシコるという悪癖がついてしまった。

 


どうなるかお分かりだろうか。もはや何も出なくなってもシャドバで負けてはシコリ続けて、チンコがクソ痛くなるのである。それでも辞められない。

 


体の節々が痛み始め、頭痛までし始める。

 

精神のみならず、肉体までもが悲痛な叫びをあげ、緊急事態と盛んに警鐘を鳴らす。

 


明日の学校の課題はもちろん後回しだ。いざとなったら出さずに逃げ切ればいい。

 


こんなバカなことを抜かしているオレの偏差値は当時40ちょいであった。

 

オレはバカだけど、バトル中の頭のキレは速いぜ‼️というキャラが漫画には時々登場するが、その時のオレはバカで、バトル中の頭のキレも鈍りまくりだぜ‼️ という最悪な災厄のハッピーセットであった。


シャドウバースでもバカで、勉強でもあまりにもバカであった。


そうして、やがて負けて失われたポイントを取り戻すため、そして1日のノルマに到達するため、睡眠時間は余裕で2時間を切った。

 


当然学校では死にかけの廃人である。その結果遅刻魔になってしまい、課題も出さず、授業中にも寝るわで、面談でゲキ詰めされることになってしまった。

 


オレは子供の頃からムキになると引くのが苦手で、体が小さいのにもかかわらず揉めるとすぐ喧嘩になって、勝ち目がないから引けばいいのに、多くの場合返り討ちにされて体のどこかに傷や絆創膏をつけて帰ってきていた。

親は、なんで引くことを覚えないのか と、いつも呆れていたのを覚えている。

 


しかし、ここで引いたら自分の気がおさまらない。あくまで自分の気持ちの問題なのだ。

 


このふつふつと腹の底から湧き上がる悔しさと怒り、そして苦悩。

 


懐かしい感覚だ。 連敗している時のオレはそう思った。

 


そう、この時と同じような感覚に陥ってしまっていたのだ。

 


相変わらず意地を張ってばかりなので、どんなに負けていて、生活リズムが崩れて、テストで赤点を連発しても、オレは時間を捻出するために環境デッキに乗り換えるということをしなかった。

 


この時の勝率の方が、もはや廃人となった当時のシャドバの勝率よりまだ高かったかもしれない。

 


もはや冷静さは全て失われ、脳死でランクマッチのボタンを押しては、相手の一挙一動に「ホワァァァァァォァァァァ‼️」とか「バーーーーーーーーカ‼️」とか叫び倒し、少しでも脳内で思い描いた理想ムーブからかけ離れると、「ご都合かよ‼️紙束‼️」とか発狂するケダモノと化していた。

 

当初憧れの眼差しで見つめていた緋色のグランドマスターの称号は、暇人を表す赤いワッペンであり、スティグマに見えた。

 

多分、そうやることでグランドマスターになれない自分を無理矢理にでも納得させようとしていたのだろう。酸っぱい葡萄のあれである。


疲れていたのだろう。適切な休憩をとって、またリフレッシュしてから挑んだ方がいいに決まっているのに、連敗という沼にハマってしまったオレは、今、取り戻さなくては‼️ という思考回路に支配されていた。

 


このゲームでは連敗にハマってしまう、下振れ という現象がある。

 


大抵の場合は、普通に運が悪く連敗しているうちにイライラして、気づかずにプレミを連発するようになり、さらに負けが混み始めるも、冷静でない本人は気づかずに勝てる試合まで落としてしまって、底無し沼に落ちてしまう という現象である。

 


一旦時間を置いて冷静になれば大抵は解決するのだが、毎日のように飲んでいた魔剤が加速させる心臓の鼓動がオレをせきたてて、休むことを許さなかった。引き下がることが愚かにも出来なかった。

 


何もしていないとソワソワしてしまうのだ。(勉強しろ)

 


あの時のオレはもはや昆虫であった。ランクマッチをするためだけに全ての思考が書き換えられた意思持たぬ機構。

 


怒りという感情は人間じゃなくても抱く低次なものらしい。間違いなくあの時のオレの1日からは、「怒」以外の感情が失われていた。まさに、シャドバをするためだけのプログラムしか搭載されていない脳を待った昆虫である。

 

ただ一つの、ランクマッチをやる という目的だけを持ってこの地上に生息する愚かな生物。


こんな言い方をしていては昆虫に失礼かもしれない。

 


最初はオレのチャレンジを見ていた友人たちも、日に日にオレが衰弱していくのを見て本気で心配するようになっていた。

 


なんと感謝すべきことであり、いい友人たちであろうか。 しかし、極度の疲労とやるさなさ、勝てないことへの恨みから、その心配さえもノイズとして変換されていた。

 


ついにオレは貧血気味になり保健室に行くことになってしまう。

 


きっとあの時のオレの目はどこか逝ってしまっていたと思う。

 


結局オレは全てを犠牲にしてなんとか月末にグランドマスターになることが出来た。

 


しかし、次のシーズンになるとまたグランドマスターからマスターに戻される。

 


そうなると、また強迫観念に襲われてグランドマスターを目指さなければいけなくなる。

 


もはやループものの報われない主人公である。

 

お酒もタバコも、ギャンブルも、ほどほどに付き合うことができれば楽しい と言われる。

 

しかし、オレはシャドウバースという、快楽は別にさほど生み出さない麻薬とうまく付き合っていく自信がなかった。


それならば、この原因ごと断ち切るしかない。

 

《果》を断るなら、まず、《因》を。

 


しばらくの後、オレはお気に入りキャラクターのスキンを当てられなかったことにかこつけて、沢山のスキンも持っていて、割と課金していたシャドウバースをデータごとアンインストールすることになる。

 


《ケダモノ》から、《人間》へと 戻るために。

 

しかし、麻薬をやってしまって捕まってしまった芸能人が再逮捕されるニュースをよく耳にするように、一度ケダモノと化してしまった者は、決して完全に戻ることなどできない。

 

2021年現在、愚かなオレはまたシャドバをやっている。

 

流石に、当時よりかはうまく付き合っているが。